2008年6月号
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「主の愛のリレーの中で」
バイクが轟音と共に角を曲がって来ました。減速しないまま、あっという間に中央車線を飛び出した瞬間、反対車線にいたのは、ジェーン(仮名)とクイン(仮名)の夫婦と運転者の乗った車でした。スピード違反の結果はまぬかれませんでした。
ジェーンはタイの大学で中国語の言語学を専攻する学生です。彼女の周りには多くのクリスチャンの友人たちがいました。初めはキリスト教を見下していたジェーンも少しずつ福音に心を開き始め、ついに彼女の人生について神が語っておられることを受け入れたのです。彼女は同じ地域の中国人クリスチャンとの学びを続け、慎重に考えて、キリストに従う決心をしました。
夫のクインが彼女に会いにタイを訪れた時、ジェーンのタイでの滞在もそろそろ終わりに近づいていました。まだ自分がキリストを信じたことを夫に話していなかった彼女は、共産党員の夫がどう反応するかと、自分の信仰の決心について打ち明けられずにいました。
しかし、ついにジェーンが夫に伝えた時、クインの反応は思いのほか好意的でした。彼は彼女のクリスチャンの友人達にも好感を持ってくれたのです。そんな彼らが事故にあったのは、その二、三日後のことでした。
その日、なんとなく気分がすぐれなかった私は、早めに友人と別れて帰宅しました。そして家に帰って十分もしない内に電話が鳴ったのです。電話の相手はジェーン達を乗せていた車の運転者でした。彼は私の家が事故現場からわずか五分の所にあることを知っていて、急いで連絡してきたのです。
現場に駆けつけた私の目に飛び込んできたのは、意識を失って道路の脇に倒れているジェーンとクインの姿でした。とっさに最悪の事態が私の頭によぎりました。激しく高鳴る心臓の鼓動を感じながら近づいた私は、クインが私の方にゆっくりと頭を向けたのを見て、安堵の余り思わず叫び声を上げてしまいました。
にわかに周囲があわただしくなりました。救急車が到着して救急隊員が処置を始めました。クインは脚を骨折、ジェーンは頭に怪我をしていました。反対車線に飛び込んできたバイクは、道路上にタイヤの激しいスリップ跡を残して現場から逃げ去っていました。ジェーンもクインも重症でしたが、それでも最悪の事態はまぬかれたのです。
病院に到着すると、この騒ぎの中で私が電話をしたタイ人の友人も到着し、ジェーンと医者の間の通訳をしてくれました。しかし夫のクインの方は英語もタイ語も話せません。でも感謝なことに、二年間中国に住んでいたアメリカ人学生に連絡すると、彼も急いで駆けつけてクインのため通訳をかって出てくれました。
クインの脚は手術が必要で、二人とも入院しなければなりませんでしたが、結局タイ人のクリスチャンの友人が彼らに付き添ってくれることになりました。車の運転者は衝撃を受けたものの、軽症でした。しかし彼の住む地域に洪水が発生していたため、汚水による感染症の危険を考えて、彼は結局水が引くまでの一週間は私の家に滞在しました。
事故の翌日、私達は再び彼らを見舞い、共に祈りました。ベトナム人のクリスチャンが賛美を歌い、私達は共にみことばを開きました。しかし私達が病室を出る時には、クインはまだ昨日の事故で明らかにひどく動揺しており、ジェーンも自分に起こったこの事に納得がいかない様子でした。
しかし幸いなことに、祈りつつ彼らを見舞う数日間の内に、クインにとって何が不安のもとになっているのかがわかってきました。彼には外科手術や現代医療についての知識がなかったために、ギブスによる治療が彼の脚にどんな効果があるのかも知らず、もう二度と歩けなくなるのではと恐れていたのです。
私達は、手術を終えて病室に戻ったクインに、脚は骨折しただけで、二、三ヶ月すれば元のように歩けるのだと説明しました。そう聞いた時のクインの顔はパッと輝き、見るからに安心したようでした。
他方、ジェーンの方はまだ葛藤を続けていました。しかしその信仰は保たれ、痛みとトラウマの中にありながらも、ついに彼女は神がなおも状況を支配しておられ、全てのことを益として下さる方であることを覚え、賛美できるようになりました。
私達はジェーンとクインが退院するまで、お見舞いを続けました。彼らの退院後、ある日本人のクリスチャン夫妻が彼らを自宅に迎え、世話をしてくれました。クリスチャンの学生達はカンパをつのり、それでクインの治療費が支払われました。(ジェーンの治療費は大学で入っていた保険でまかなわれました)。
この事故を通して、神は私達がジェーン達にキリストの愛を分かち合う様々な機会を与えて下さいました。その結果、クインは自分とキリスト教との関係を真剣に考えるようになったのです。私達は毎週開かれていた祈り会に彼らも参加できるように、彼らがお世話になっていた家で集会を持ちました。今回事故にあった三人の証が分かち合われ、出席した全員が励まされた祈り会となりました。
ジェーンは自分の信仰が不安定だったと認め、「信仰的に成長したい、そのために祈ってほしい」と願いました。又、この事故を通して多くの愛を経験し、心を動かされたクインは、「僕にクリスチャンになることを無理強いしないでほしいけど、ジェーンがより強いクリスチャンになれるように応援する。」と言いました。 しかし、「僕はもっとじっくり考える時間がほしい。」と言ったクインは、同時に主を信じることを真剣に考えています。
ジェーンは元気で、信仰において成長し続けています。彼女は今、クインと一緒に自分が中国に戻った後、どのように主に仕えることができるかと考えているところです。
「KY総主事?」
シンガポール 菅家庄一郎、容子
皆様のお祈りにささえられて、少しずつ総主事としての仕事を始めています。横山師夫妻が六月まで引き継ぎの期間として助けてくださっています。五月は北海道、八月には関西地区も短期ではありますが教会訪問させていただきます。
日本語で「空気が読めない」ということをKYと略して言うそうです。日本に住んでいてもそういう人がいるなら、宣教師のように長く海外にいた者は、正真正銘のKYです。先日も、サンカンシオン(三寒四温)と言われて、漢字が思い浮かびませんでしたし、メタボと聞くと「超合金の人形」(メタル・ロボット)を思い浮かべます。芽生と結は、小学校へ通うようになりましたので、最近、授業参観へ行ってきました。結は、算数の時間に堂々と手をあげてまちがった答えをしていました。後で、「結、あの答えは残念だけどまちがっていたね。」と言ったところ、「えー!そうだったの?絶対合ってると思ってたー。」との返答。親子そろってKYかもしれません。ただ、KYでいいのではないかという気もするのです。空気を読みすぎて、まちがえてしまうこともあるでしょうし、察するのではなく、きちんと話し合うことも時には必要だと思います。また、クリスチャンには「まちがった空気」を変える使命も与えられているのではないでしょうか。(庄一郎)
桜が満開の頃市川に引っ越して来て以来、チューリップ、菜の花、藤、紫陽花…毎日様々な繊細な色合いの花たちと緑の美しさを堪能しています。私達の母国は、なんと美しい国なのでしょう!しかし、美しい季節とは裏腹に、耳に入ってくるニュースは悲しいものが多いです。日本の美しさと暗さを覚えた四月でした。
祈っていただいています子供たちは、元気に市川小学校に通っています。すぐ近くに仲良しのお友達も与えられ、日曜日には同じ敷地内の教会で、これまた沢山のお友達と午後中楽しく遊んでいます。屋上で洗濯物を干すとき、ご近所の特大鯉のぼりが風を受けて泳いでいるのを眺めながら、日本に帰ってきたんだなあーと実感し、主が与えてくださった良きもの一つ一つを感謝する毎日です。
感謝するもう一つは、素晴らしい助け手です。この宣教ニュースはじめ、印刷物の奉仕を引き継いだ私は、黒澤さんの机の隣にスペースを頂きました。コンピューターも初心者の私に、黒澤さんは忍耐強く質問に答えてくださり、少しずつ新しい奉仕を学んでいます。すぐ後ろの総主事室から、夫も何かあると出てきて、事務所の皆さんのお知恵を借りています。上の階では、佐々木さんが、週に二回会計の仕事をして下さっています。また、チャペルの松浦姉が、時間のある度領収書書きなど事務のボランティアに来て下さっています。チームで奉仕にあたれる幸いと、皆様の祈りとご支援を心から感謝しつつ。 (容子)
【祈りの課題】
1.6月で横山師夫妻から菅家師夫妻への、総主事の仕事の引き継ぎ期間が終わります。主からの知恵が与えられ、任務を全うできますように。
2.OMFを通して宣教師になりたいという願いのある候補者が数人与えられています。主がお一人お一人とその派遣教会に、さらなる確信をお与えくださり、ふさわしい時に宣教師として送り出されるようにお祈りください。また、男性の宣教師も与えられるようにお祈りください。
「『見えん』と言うな。ミェン語の将来」
北タイ・ミェン族 有澤達朗、たまみ
昨年十月の「母語から始める多言語教育」セミナーに引き続き、今年五月に第二回が開かれた。ミェン族から九人が参加。
他にはスゴーカレン族、ルワッ族、ブライ族、アクッ族、ビス族、モン族、タイ人小中学校教師、それにオブザーバーとしてマヒドン大学他の博士課程学生たちが参加。
人文学部長ラック博士は開会挨拶でタイ国の多言語共存の豊かさを強調した後、こう結んだ。「皆さんをお迎えしたパヤップ大学として一言加えたいと思います。私たちがキリスト教主義の大学として心から願うことは、皆様がこのセミナーを通して神様からの祝福を受けられますようにということです。」
今回は、宿題であった地域社会の言語使用に関するアンケートを基に、各民族の言語プロジェクトを立案する講習を五日間受けた。ミェン族の立てた目標は次の通り。
いわく「今後十五年から二十年以内に、タイ国のミェン族の七十パーセントが三種類のミェン文字で読み書きができるようになることを目標とする。その結果、言語に付随する文化と郷土の知恵が保存され、社会に貢献することを通してミェン語の尊厳が認められ、また世界に散在するミェン族との交流が深まることを目指す。そのために三年以内にミェン語教科書著者を養成し、五年以内に二年コースの幼稚園カリキュラムを作り、モデル村で実施する。七年以内に『ミェン語文化保存財団』を設立する。」
このセミナーの四日前、バンコクで言語開発に関する学会があり、そのことがテレビで大きく報道された。それを見た聖書翻訳者のグエイフォン長老は「タイ政府が各民族の言語の使用を奨励し始めた」と目に涙を浮かべ言った。彼は、翻訳の偉業を成し遂げたものの、果たしてミェン語聖書が次世代に読まれるのか不安だった。ところが国家レベルでタイ国の多言語性を容認・促進する方向へ動き出したのを知り、泣いたのだ。
さてパヤップ大学でのセミナーで各民族から参加の動機と目的を述べる機会があった。チェンマイ生活で二年間我が家に下宿していたフィン兄はこう言った。「ミェン族がミェン語と文化を保存し、発展させ、同族間でのコミュニケーションの促進を図るとともに、タイ社会への積極的な貢献をするためにこの学びに参加しました。何よりも、このことを通して神に栄光を帰することを願っています。」
【祈りの課題】
1.「母語から始める多言語教育」セミナーに参加した3人の学生が、チェンライ県の大学に「ミェン語識字教育クラブ」を始めることができるように。大学との交渉のためにお祈りください。
2.『ミェン語-英語辞書』(2009年にノーザン・イリノイ大学から出版予定)の編者でバイオラ大学名誉教授パーネル氏はバンコクに出張中、心臓病で入院しました。ご自分にもしものことがあった場合に備えて、辞書のデータベースを達朗師に譲る準備をしています。このことは『ミェン語-タイ語辞書』を作るために必要です。氏の健康回復と版権に関わる複雑な手続きに神様の守りがありますように。
「南の島からの便り その2」
日本 佐味湖幸
南フィリピン短期宣教プログラム(四人の日本人青年参加)後半は、ミンダナオ島ダバオ市においてOMF都市貧民チームとともに活動した。
まずは、回教徒の人々が住んでいる海辺(満潮時にはある家は海上の家となる)の貧民街での活動。「人々を改宗させるようなことはしない」という条件付きで、OMFはこの地域に招き入れられ、幼稚園(午前)と青少年のドロップインセンター(午後)の働きをしている。私たちはこのセンターで集まってくる青少年たちと遊んだ。小松君はギターを教え、野村君はゲームをし、齋藤さんはひたすら折り紙を教えた。看護師の大林さんは「え〜、なにこれ?こんなの(日本で)見たことない!」という皮膚病ややけどの患者の手当てをした。これで、なにか宣教の役に立っているのか?という疑問が頭をよぎるが。この地域は青少年のドラッグ使用が大きな問題であったが、彼らはこのセンターに来ることにより誘惑から守られ、より建設的な生活をするようになったという。 センターに行けば、そこには心を開いて、彼らを受け止め、愛して、話し相手、遊び相手になってくれる大人がいる。それも、クリスチャンの!「自分たちは回教徒だ」と彼らは言うが、このセンターで本気になって彼らの遊び相手になっている宣教師たちのうちにキリストを見ているのではないかと思う。別のコミュニティーでは、自助活動としてカード作りが行われていた。そこで、私は古紙を使った再生紙作りを指導し、齋藤さんは折り紙、千代紙を使ってカードに貼れる小さな人形作りを指導して、大変喜ばれた。貧困の中で無力感の中にある彼らが自分たちの手で作ったものによって新たな収入を得ることが出来るようになるということは、神様が与えられた人間の尊厳の回復である。
その他、公園で寝起きしているホームレスの人々(子供を含めた家族や青少年たち)や、路上で客を待つゲイの人たちなど、社会から疎外されている人たちの中に入って行って、彼らの隣人となり、キリストの愛を言葉と行動で伝える。その宣教師たちの生き様に日本でのキリスト者としての自分たちの在り方、生き方を問われた。
【祈りの課題】
1.6月5日から7日まで、公には福音宣教が許されていないアジアのある国のための宣教大会がソウルで行われます。この国の門戸が開かれるように。
2.回教徒のコミュニティーにあって、キリストを信じる信仰をもつようになった方々が与えられています。主が彼らの命と証を守ってくださり、さらにキリストを救い主として信じる方々が起こされるように。
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