2009年12月号
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「相手の土俵に立って」
テラ・ヴァン・トゥィラート師
「人はうわべを見るが、主は心を見る」( I サムエル一六・七)
Aさんは台湾南部の貧しい家庭で育ち、十八歳の時、父親によって売春宿に売られてしまった女性です。自由の身になるために六年間そこで働かなければなりませんでした。今、彼女は五十代になり、孫もいる身ですが、今も同じ方法で収入を得ているのです。
Bさんは毎日五千台湾ドル(約一万三千八百円)稼がなければなりません。ヤミ金融から借金した利子の返済だけでこの金額なのです。しかも彼女の負債は増え続けています。
Cさんはクリスチャンですが、あえて祈ることも、教会に行くこともありません。
Dさんは十年前に夫と死に別れた後、ソープランドで働き始めました。死んだ夫が残した多額の借金を背負っていますが、二人の子供たちはまだ学齢期です。他に収入を得る道は見い出せません。
Eさんは「来世はもう売春しなくてもよくなるといいんだけど‥‥」と願っています。
彼女たちは全て、万華の歓楽街で働く女性たちです。万華は台北の中でも暴力団の活動やホームレスの人々が集まる場所として知られている地域です。ソープランドで働く女性もいれば、売春のために街頭に立つ人たちもいます。年齢は三十から七十まで様々です。その理由は子供たち・両親・孫を養うため、借金返済のため、自分自身の生活のため、又は単にもう二十年以上こうしているから、と言う人もいます。かつて売春は収入のよい仕事と言われましたが、今は違います。又、女性たちの多くは未婚の母や未亡人、もしくは離婚を経験しています。
三年前にこうした女性たちへの働きを始めた時、私たちは彼女たちにどのように近づいていけばよいのか全くわかりませんでした。しかし私たちをこの働きに召して下さった主は、常に私たちを励まし、導いて下さいました。その中で私たちが学んだことをいくつかご紹介します。
私がこの働きを始めるにあたってOMFから承認を得た時、「安全のために単独行動は慎むこと」という一つの条件がつけられました。最初は同労者がいなかったので、私は規制されているかのように感じましたが、やがて主が同労者を与えて下さった時、チームで働くことがいかに大事なことかが明らかになってきました。
女性たちは様々な必要を抱えています。そんな彼女たちが集会に来てくれる時は、十分なスタッフがその場にいて、彼女たち一人一人に気を配れるほうがよいのです。彼女たちの方でも、いろんな性格、背景、賜物を持つ複数の人達がいることを喜んでいます。チームの一人ひとりが主を愛し、従うことの生きた事例となるのです。
最初は「街頭訪問」から始まりました。客を求めて街頭に立っている彼女たちに声をかけ、知り合うのです。月餅やもち米のお菓子、イースターエッグ、クリスマスカード、冬には肉まん、夏にはうちわなどを持っていきます。
こうしたおみやげを持っていくと、彼女たちとの会話がしやすくなり、愛情と尊敬の念を表しやすくなります。彼女たちに合いそうな伝道的なトラクトなども用意します。回を重ねる内に、誰がこうした無料のトラクトを喜んで受け取ってくれるかもわかってきます。
しかし、受けることは与えることより大事です。彼女たちのことを知ること―過去の経験や現在直面している問題に耳を傾けるのです。アドバイスをしたい誘惑にもかられますし、彼女たちが困難な状況から「抜け出せる」ように助けたいとも思います。しかし、彼女たちには問題から「抜け出せない」様々な理由があるのです。その理由を理解していくことを通して、初めて神の愛と知恵をもって彼女たちの人生に関わり、語ることができるのです。
彼女たちの話を聞くことを通して、彼女たちを愛し、尊敬する思いが深まります。例えば、私は彼女たちの方が私よりもずっと深く、犠牲的愛について知っていることに気づきました。聞くことで信頼が生まれ、信頼関係は福音を伝える上で最上のかけ橋となるのです。
しかし同時に彼女たちが仕事中であることを忘れてはいけません。もし彼女たちがお客を見つけたら、私たちはそっと立ち去ります。そうしてまた次に会う機会を残します。
中には冷ややかな反応しか返ってこない人もいます。それでも私たちは何度も接触を試みます。「ただ説教しに来たのかしら?それとも本当に私を気づかってくれているの?」と、彼女たちは私たちの動機を知るために、テストをするのです。
こうした訪問の前後には長い祈りの時を持ちます。出かける前には彼女たちと個人的に話す機会が与えられるように、彼女たちと祈ることができるように、そして実際的な形で愛を示すことができるように、と祈ります。その後には会った女性たちのためにとりなして祈ります。
私たちが知る限りでは、他のクリスチャンたちはこの地域に伝道に入っていないようです。それでも、ここの女性たちへの神様の働きはすでに始まっていたのです。そうした主のお働きを出会った人の中に見た時、その人のためにさらに時間と祈りをかけ、既に御霊がなしておられるお働きに沿う形で行動します。
彼女たちは喜んで集会に来てくれますが、その理由は、私たちがまず先に彼女たちの所へ行き、彼女たちの場所で出会い、その人生や必要を知ったためと思います。
彼女たちの多くは熱心な仏教徒で、普通ならクリスチャンの集会に進んで参加しようとはしないでしょう。それでも多くの人がクリスチャンが示す愛に魅きつけられて来るのです。彼女たちの土俵で会うならば、神についての私たちの話も進んで耳を傾けてくれるのです。
こうした街頭訪問を一年ほど続けた後、クリスチャンたちが経営している地元の小さな食堂で、初めてのクリスマス会を開きました。信仰による思い切った試みでしたが、二十人もの女性たちが来てくれました。さらには地元教会の助けを得て、伝道なお茶会が定期的に行われるようになりました。
働きが大きくなるにつれ、自分たちの集会場が必要になり、神様はそれを備えて下さいました。「真珠家庭園」と私たちは呼んでいます。週一回、無料の昼食を出しますが、食事を喜んでくれると同時に、安全にありのままの自分でいられる場所としても喜んでくれています。食後には、賛美とみことばと祈りの時を持ちます。他の日に個人的な祈りや聖書の学びをしにくる人達もいます。
最近は英語のクラスも始めました。又、将来は新しい技術を身につけたい人達のためのクラスも始めたいと願っています。この地域の女性たちは負債や何かしらの中毒になっている人が多いため、実際に彼女たちを支援できるような方法を模索しているところです。可能な場合には公的支援サービスを紹介しますが、それにより、よい支援が得られるケースもあります。
これは始まったばかりの働きですが、街頭訪問だけではなく、娼館でジーザス・フィルムを上映したり、無料のネイルケアなどが受けられる「ビューティ・ナイト」を開いたり、そば屋さんでリラックスした形での伝道会を開いたりもしています。多くの女性たちが福音に興味を示し、信仰者として成長し始めた人たちもいます。
まず私たちの方から彼らの土俵に入るならば、教会に足を向けるかもしれない人々が、皆さんの周囲にもたくさんおられるのではないでしょうか?
「ゆりかごから出て」
カンボジア 小川文子
皆様いかがお過ごしでしょうか。いよいよクリスマスも間近となりました。柔らかな赤ちゃんとなって来て下さった主を迎えるにふさわしい柔らかな心をと願いつつ、学びに励んでいます。
異文化の中に入ることは、生まれることに似ているそうです。考えてみると、最初の一ヶ月は、守られて平穏で、まだ母の胎内にいるようでした。
二ヶ月目にはだんだんと活動範囲も広がり、ベビーベッドから外を見ているような感覚で、外の人々を見ながら「私もあの中に行きたい。もっとリアルなカンボジアを知りたい」ともどかしく思っていました。三ヶ月目の今は、ベッドから出てハイハイをしている感じがします。主に二つの出来事が大きなきっかけとなりました。 一つは盗難にあったことです。パソコンやカメラなど貴重品の入った鞄を不用意に自転車のかごに入れて帰宅中、通りすがりのバイクに盗られてしまいました。しばらく、後ろからのバイク音がトラウマになりましたが、怪我もせず守られて感謝でした。また、変わるべきところを含め、多くのことを教えられました。自分の考え方や生き方について、また被害に逢う気持ち、多くの友の励ましなど、見えるものは失いましたが、価値あるものをたくさん頂きました。
カンボジア人と自分の感覚の間にあるギャップが、こういうことを通して少し埋められていく気がしました。
もう一つの出来事は、ホームステイをしたことです。新人担当のルイーズ師のお手伝いさん宅を紹介して頂き、充実した時を過ごしました。貧しいけれど極貧ではなく、いつでも誰かが遊びに来ているオープンなお宅です。人々の一部になることが、ここではとても容易でした。そこには私の切望していた交わりがありました。毎晩、家庭集会が持たれます。ぎゃんぎゃん、ははは、ぎゃあぎゃあ、あーだこーだ、わーわー、と子供も大人も共に十人程で、賛美し聖書を読み、祈ります。飾り気と無縁のこの交わりがとても好きでした。語学にもとても良いです。今後も週末を中心に、断続的にホームステイを続けさせて頂く予定です。人々とよい関係を築き、なおカンボジアの人々と一つになっていけますように、お祈りください。
【祈りの課題】
1. 11月末に待望のハウスメイトが来ます。感謝。彼女や他のチームメイト、またホームステイ先の人々との関係が祝され、祈りのパートナーが与えられますように。
2. 産休で帰国中の同僚から原付を借り、練習することになりました。 プノンペンでの運転は容易ではありませんが、運転が守られますように。
「インマヌエルの主とともに」
日本 菅家庄一郎、容子
主にあってクリスマスおめでとうございます。十月二十五日は坂本朋子宣教師の壮行祈り会が高根沢キリスト教会にて行われました。栃木県の小さな教会、宣教師が牧師の教会で、牧師自身も働きながら牧会をしています。経済的に余裕のある教会ではありません。
さらに坂本師は家族で唯一のクリスチャンで、この教会の伝道師でもあります。このような背景から、喜びをもって坂本師を送りだそうとされている方々を見て胸が熱くなりました。
手軽に海外旅行ができる時代となり、インターネットで世界中の情報が瞬時に入手できるようになりました。宣教師を派遣するということも痛みを伴わない安易なグローバル化と同一視されやすい時代です。
しかし、宣教師を派遣するということは昔も今も変わらず、本人にも送りだす側にも大きな犠牲を伴います。キリストを伝えることの絶大なる価値を知っているものだけが、この業に参加するのです。高根沢キリスト教会の祝福のため、坂本先生の未信者の御家族(ご両親と妹さん)の救いのためお祈り下さい。(庄一郎)
主イエスの御降誕を覚え、心よりご挨拶申し上げます。私たちが互いにこのような交わりを持つことができるようになったのは、まさにインマヌエルの主の故です。どうかこの良き訪れが、格別この月に多くの人に伝えられ、受け入れられますように。
最近教えられていることの一つは、どんなことでも「心をこめて丁寧に」することです。私の中にはずっと無意識のうちに、沢山のことを一度にこなさなくてはいけない、という思いがあり、不器用なのに多くのことをこなそうとしてドタバタと慌しく、雑にしてしまう悪い習慣があったように思います。「一度に一つのことを心をこめてする」ことはカンボジア時代の友人から教えられたことですが、それを今学んでいます。特に、人を訪問したり、訪問客をおもてなしする時がその良い実践の時です。心をこめて準備をし、その人に集中し、その人を喜ぶこと。先月も多くの出会いが与えられました。そして、それぞれの出会いの中で、主イエスの臨在を覚え恵まれました。神様が一人ひとりに生きて働いておられることをこの目で見て、神様を崇めました。主が共にいてくださる交わりは、なんと祝されたものでしょう!インマヌエルの主イエスのみ恵みが、皆様の上にも豊かにありますようにと祈りつつ。(容子)
【祈りの課題】
1. 容子師は12月3日、チャペル・オブ・アドレーションのレディース・サークルのクリスマス会、8日には平塚福音キリスト教会の婦人会のクリスマス会で奉仕されます。御言葉を正しく解き明かすことができますように。
2. 庄一郎師は、12月12日に、フリーメソジスト教団・中高生キャンプのクリスマス・リユニオン集会で話します。主からの知恵が与えられますように。
「昔風」
北タイ・ミェン族 有澤達朗、たまみ
「作った教材、早速試して見ようよ。」十月、大学の中間休暇中に識字教育教材作成研修会に参加したミェン語識字教育サークルの面々は、休暇返上でチェンライ県内のミェン族の村二箇所を訪問した。
最初の村では村民のミェン語に対する意識調査をアンケートで行った。ミェン語による幼稚園を始める希望があるかどうかを知るためだ。そこは雨が降ったら、四輪駆動車でも登るのが困難な所。また腰痛が悪化した主人は、主治医から安静一週間、と告げられ同行できない。日本に祈りを要請した。
明け方、大雨になる。有澤車とオートバイに二人乗りで総勢十二人で出発する頃、麓は晴天になり、山道も乾き始め、村に到着。村人の反応も良く、長いアンケートにも喜んで協力してくださった。
夕方、次の村へ。一泊し翌日、四〜五歳の子供たちを中心に、絵でミェン語を教える教材、読み聞かせ物語、ミェン語の歌を教えてみた。全て自作。神学生二人と学生寮指導員以外は全員大学生。子供たちに教えるのは初めて。彼らの緊張感が伝わってきたが、子供たちに助けられ楽しく賑やかな一時間だった。改善すべき点、良い点等が分かった。更に指導教官不在の中、自分達だけでやってみて「出来るんだ」と自信がもてた様子。街に出て大学や神学校で学ぶ若者が、昔風の村の生活に戻り地域貢献するよう祈る。(たまみ)
祈っても、探しても、後継者が与えられず、私たちがミェン族への最後の宣教師になるのではないかと思い始めていました。しかし十月末、未伝の地域を訪問し、再び新人宣教師を求めて祈る力を得ました。
ナーン県の十箇所以上の村で、昔ながらの開拓伝道が依然として必要です。ミェン族への福音伝道は魅力的な働きではありません。伝統宗教と迷信からの強い拒絶、電話・インターネットの無い孤立した生活環境、暑さ寒さの変化が極端な森の奥での生活、サタンからの直接的攻撃、さまざまな病気、異端との神学的戦い、蛇や昆虫との共存、あらゆる種類の罪(覚醒剤、喧嘩、賭け事、姦淫、不品行、酩酊)との戦い、文盲との戦い、不誠実な伝道者からの批判や裏切り。
これらを気にせず前進する、昔風の宣教師になりたい人はいませんか?決して退屈しません。ご希望の方はご連絡ください。(達朗)
【祈りの課題】
1. 10月の新開拓地視察旅行によって、ナーン県の15箇所以上のミェン族の村々に福音が届いていないことが分かりました。宣教師とミェン族の神学校新卒の働き人が、来年からこの地域に既存するサンティパープ村のミェン教会と協力して、周辺のすべての村々に福音を伝えることを計画しています。よい準備ができるように、またミェン族の神学生が給料の良いタイ人教会に流失しないようにお祈りください。
2. 12月20日、クローンラーン教会の新会堂献堂式のため。過去10年に、5箇所のミェン教会が新会堂を建設しましたが、全体的に内向的な体質になりつつあります。10年後、これらの教会堂がからっぽになることがないように、諸教会が伝道に力を注ぐようにお祈りください。そのことをチャレンジする式での説教奉仕のためにも。
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